第11章 退職と転職の手続き
辞めるときには、契約の終わり方、雇用保険、健康保険と年金、税の4つが同時に動きます。前の章で学んだ制度が、ここで一度に切り替わります。
この章で分かること
退職の申し出から契約が終わるまでの期間。基本手当を受けられる条件。退職後の健康保険の3つの選択肢。
辞めるときの決まり
期間の定めのない雇用では、労働者はいつでも解約を申し入れられ、申し入れから2週間で契約が終わります(民法第627条)。就業規則で期間を大きく延ばしたり、会社の許可を条件にしたりする規定は無効とされています。期間の定めのある契約を途中で辞めるには、やむを得ない事由が必要です(民法第628条)。ただし1年を超える契約では、1年を過ぎた日からはいつでも辞められます(労働基準法第137条)。
反対に、使用者が解雇するときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払わなければなりません(労働基準法第20条)。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法第16条)。
労働者が求めれば、使用者は退職の証明書を遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法第22条)。
雇用保険の基本手当
雇用保険の基本手当は、働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態の人が、ハローワークで求職の申込みをして受けるものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受給の要件 | 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12か月以上(倒産・解雇などの特定受給資格者などは、離職の日以前1年間に6か月以上)。賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または80時間以上ある月を1か月と数える |
| 待期 | 受給資格の決定後、失業の状態にあった日が通算7日になるまでは支給されない |
| 給付制限 | 正当な理由のない自己都合退職は、待期の後1か月(令和7年4月1日以後の離職)。5年間に2回以上の自己都合退職で受給資格の決定を受けた場合は3か月。令和7年4月以後に教育訓練等を受けた場合は解除される |
| 基本手当日額 | 離職前6か月の賃金(賞与を除く)を180で割った賃金日額の約50〜80%(60〜64歳は45〜80%)。年齢ごとに上限がある |
| 受給期間 | 原則、離職の翌日から1年間 |
| 被保険者であった期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|
| 一般の離職者(自己都合など) | 90日 | 120日 | 150日 |
健康保険と年金の切り替え
退職すると、会社の健康保険の被保険者の資格を失います。次の会社にすぐ入らない場合、選択肢は3つです。
- 任意継続:退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があれば、資格喪失日から20日以内に申し出て、最長2年間、同じ健康保険に入り続けられます。保険料は会社負担分がなくなるため全額自己負担で、退職時の標準報酬月額(上限あり)に都道府県支部の料率をかけて決まります(第8章)。
- 国民健康保険:住んでいる市区町村で加入します。
- 家族の健康保険の被扶養者:収入などの条件を満たす場合です。
年金は、厚生年金の資格を失い、国民年金の第1号被保険者に切り替わります(次の会社に入るまでの間も同じです)。国民年金の届出が必要です。厚生年金に入っている人に扶養されていた配偶者も、第3号被保険者から第1号被保険者への届出が必要です。
税の精算
- 所得税:同じ年のうちに再就職した場合は、前の勤務先の源泉徴収票を新しい勤務先に出し、前の勤務先の給与も含めて年末調整を受けます。再就職しなかった場合は年末調整を受けられないため、翌年以後に確定申告(還付申告)をすると、納め過ぎた分が戻ります。還付申告は翌年1月1日から5年間出せます。
- 住民税:会社が給与から差し引いていた住民税(特別徴収)は、6月1日から12月31日までに退職した場合、残りが自分で納める普通徴収に切り替わります(申し出れば最後の給与などからまとめて差し引く一括徴収もできます)。1月1日から4月30日までに退職した場合は、5月31日までに払われる給与や退職手当がその残りの額より多ければ、そこから一括で差し引くことになっています。
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確認の4択
期間の定めのない雇用で、退職を申し入れてから契約が終わるのは何週間後ですか。
民法第627条により、申し入れから2週間で終わります。
令和7年4月1日以後に正当な理由なく自己都合で退職した場合の、基本手当の給付制限は原則どれだけですか。
原則1か月です。5年間に2回以上の自己都合退職で受給資格の決定を受けた場合は3か月です。
協会けんぽの任意継続に入れる期間は最長どれだけですか。
最長2年間です。資格喪失日から20日以内に申し出ます。
出典
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- 厚生労働省「令和7年4月から自己都合離職者の給付制限が変わります」
- 札幌公共職業安定所「基本手当の支給が始まる時期は」
- 全国健康保険協会「任意継続」
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
- 国税庁 タックスアンサー No.2674「中途就職者の年末調整」
- 国税庁 タックスアンサー No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」
- 武蔵野市「給与からの住民税特別徴収について」
更新:2026年11月4日。この章は一般的な情報で、個別の税務・労務の助言ではありません。