第2章 労働契約と労働条件の明示
労働契約は、働くことと賃金を払うことの合意で成り立ちます。会社は契約を結ぶときに労働条件を示さなければならず、その一部は書面で示すことが決まっています。
この章で分かること
労働条件通知書に何が書かれているべきか。2024年4月から加わった3つの明示事項。
労働契約が成り立つとき
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立します(労働契約法第6条)。契約は、労働者と使用者が対等の立場で合意して結び、変えるものとされています(同第3条)。
契約の期間を定める場合、その上限は原則3年です。一定の専門的な知識を持つ人や60歳以上の人との契約は5年までです(労働基準法第14条)。
書面で示される労働条件
使用者は、労働契約を結ぶときに、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条)。このうち次の事項は書面で示すことが原則で、労働者が希望すればファクシミリや電子メールなどでもかまいません(労働基準法施行規則第5条)。
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 契約期間 | 期間の定めがあるかどうか、ある場合はその期間 |
| 更新の基準 | 期間の定めがある契約を更新する場合の基準。通算期間や更新回数に上限があればその上限 |
| 就業の場所・業務 | 働く場所と従事する業務。変更の範囲を含む |
| 労働時間・休日 | 始業と終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇 |
| 賃金 | 賃金の決定、計算と支払の方法、締切りと支払の時期(昇給は書面でなくてもよい) |
| 退職 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
示された労働条件が事実と違う場合、労働者はすぐに労働契約を解除できます(労働基準法第15条第2項)。
2024年4月に加わった明示事項
2024年4月から、明示しなければならない事項が3つ加わりました。
| いつ | 加わった事項 |
|---|---|
| すべての労働契約の締結時と、有期労働契約の更新時 | 就業場所と業務の変更の範囲 |
| 有期労働契約の締結時と更新時 | 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容 |
| 無期転換の申込みができるようになる更新時 | 無期転換を申し込めること、無期転換後の労働条件 |
「変更の範囲」は、将来の配置転換などで変わりうる場所と業務の範囲です。転勤の有無を知りたいときは、この欄を見ます。無期転換は第3章で扱います。
就業規則との関係
使用者が合理的な労働条件を定めた就業規則を労働者に周知していた場合、労働契約の内容はその就業規則の労働条件によります(労働契約法第7条)。個別の合意で就業規則と違う条件を定めた部分は、就業規則の基準を下回らない限り、その合意が優先します。
就業規則に必ず書かれる事項は、始業と終業の時刻・休憩・休日・休暇、賃金の決定・計算・支払の方法・締切り・支払の時期・昇給、退職(解雇の事由を含む)です(労働基準法第89条)。入社のときは、労働条件通知書と就業規則の両方に目を通します。
確認の4択
2024年4月から、すべての労働契約の締結時に明示が必要になった事項はどれですか。
2024年4月から、すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、就業場所と業務の変更の範囲を明示することが必要になりました。
明示された労働条件が事実と違っていた場合、労働者ができることは。
労働基準法第15条第2項により、労働者は即時に労働契約を解除できます。
期間の定めのある労働契約の期間の上限は、原則何年ですか。
労働基準法第14条により原則3年です。一定の専門的知識を持つ人や60歳以上の人との契約は5年までです。
出典
- e-Gov法令検索「労働基準法」
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」
- e-Gov法令検索「労働契約法」
- 静岡労働局「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
- 栃木労働局「就業規則の作成・変更・届出の義務(第89条、第90条、第92条)」
- 大阪労働局「労働基準関係法令のあらまし(令和8年3月版)」
更新:2026年11月4日。この章は一般的な情報で、個別の税務・労務の助言ではありません。