第1章 キャリアを形づくる制度の地図
会社で働くことには、法律・就業規則・労働契約の3つの決まりが重なっています。この教科書は、それを雇用関係が進む順に4部に分けて読みます。
この章で分かること
この教科書の4部がそれぞれ何を扱うか。決まりの3つの層の優先順位。
雇用関係の4つの段階
会社員と会社の関係は、契約を結ぶところから始まり、働き、賃金を受け取り、やがて辞めて次へ移るところで区切りを迎えます。この教科書は、この順に4部を立てています。
| 部 | 扱うこと | 主な決まり |
|---|---|---|
| 第1部 入る | 労働契約の結び方、明示される労働条件、雇用の形(無期・有期・パート・派遣) | 労働基準法、労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法 |
| 第2部 働く | 労働時間・休憩・休日、残業の上限と割増賃金、年次有給休暇 | 労働基準法 |
| 第3部 受け取る | 給与明細、社会保険料、所得税と住民税 | 健康保険法・厚生年金保険法など、所得税法、地方税法 |
| 第4部 移る | 賃金の相場、退職の申し出、雇用保険の基本手当、保険と税の切り替え | 民法、雇用保険法、統計法に基づく賃金構造基本統計調査 |
どの部も、前の部を前提にしています。たとえば第5章の割増賃金は第4章の法定労働時間を超えた分に払われるもので、それが第7章の給与明細の「時間外手当」に載ります。第8章で学ぶ標準報酬月額は、第11章で退職後の任意継続の保険料を決めるもとになります。
決まりの3つの層
働くときの条件は、法律、会社の就業規則、本人と会社の労働契約の3つの層で決まります。
- 法律:労働基準法は労働条件の最低基準を定めています。これに達しない部分の労働契約は無効になり、法律の基準によります。
- 就業規則:常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法第89条)。就業規則は法令や労働協約に反してはなりません(同第92条)。
- 労働契約:就業規則の基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分が無効になり、就業規則の基準によります(労働契約法第12条)。
つまり、法律が底を決め、その上に就業規則、さらにその上に個別の契約が乗っています。会社が法律より多い有給休暇を就業規則で定めていれば、その日数が適用されます。
一次情報の探し方
制度は改正されます。この教科書の数字は2026年11月時点で確かめたもので、各章の末尾に出典を載せています。自分で確かめるときは、次の場所が一次情報です。
| 分野 | 確かめる場所 |
|---|---|
| 法律の条文 | e-Gov法令検索(デジタル庁) |
| 労働時間・休暇・賃金の決まり | 厚生労働省、都道府県労働局、「確かめよう労働条件」 |
| 雇用保険 | ハローワークインターネットサービス |
| 健康保険・厚生年金 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)、日本年金機構 |
| 所得税 | 国税庁(タックスアンサー、年末調整のしかた) |
| 住民税 | 総務省、住んでいる市区町村 |
| 賃金の統計 | 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 |
用語の意味は百科で引けます。各語から、その語を定義している章へ戻れます。
確認の4択
就業規則で定めた労働条件より低い条件を、個別の労働契約で定めた場合はどうなりますか。
労働契約法第12条により、就業規則の基準に達しない部分は無効になり、就業規則の基準によります。
就業規則を作成し、届け出る義務があるのはどの事業場ですか。
労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場に作成と届出の義務があります。
この教科書の第4部「移る」で扱う内容はどれですか。
第4部は賃金の相場、退職の申し出、雇用保険の基本手当、退職後の保険と税の切り替えを扱います。
出典
- e-Gov法令検索「労働基準法」
- e-Gov法令検索「労働契約法」
- 栃木労働局「就業規則の作成・変更・届出の義務(第89条、第90条、第92条)」
- 大阪労働局「労働基準関係法令のあらまし(令和8年3月版)」
更新:2026年11月4日。この章は一般的な情報で、個別の税務・労務の助言ではありません。